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低・中学年で
やっておきたいこと
Q:ぼーぐなん教材のWonderland シリーズ3冊〔Welcome to Wonderland (Red & 
Blue)、English in Wonderland (Green) 〕と、中・高学年用のAction シリーズとを較
べると、イラストの量、各ページの色彩など違いが幾つもあります。Wonderland シリ
ーズでどんなことをやっておくと、上手く中・高学年の活動に入っていけるのでしょうか。

A:Wonderland シリーズでは、2〜3歳の子どもを育てているお母さんを見習って、
@なるべくたくさん、子どもたちの身の回りにあるものについて、わかりやすく話しかけ
 てあげること
Aおもちゃなどの小道具を手に取りながら英語で話しかけ、表情や身振りを使って「こと
 ば」のやりとりをすること
B歌いなさい、と言わずに歌って聞かせて、いつの間にか一緒に歌えるようにすること
C絵本を見せてイラストでお話の展開を噛み砕いて簡単な英語で聞かせること
Wonderland の3冊のテキストは、絵本のようなつくりにして、イラストの中に子ども
たちが何処かで聞いたことのあるお話を散りばめておき、想像の世界を広げて英語でのや
り取りに心をゆだねられるようにしました。

 身近な題材を取り上げて英語を使い合ううちに、知らず知らず「英語らしさ」を体得し
ていくことでしょう。「習うより、慣れよ」という指導の中で、英語という言語の特質を
理屈ではなく体で感じ取っていくことが、この時期には大切だと考えているのです。

 「英語らしさ」を一言で言うのは難しいですが、バナナも英語らしく言うと音が随分違
います。好きだ、どこにある、何色だ、と表現するときに語順が随分違うことも気にせず
に表現できるようになる、英語のイントネーションやリズムも、聞こえたとおりに真似る
ことができる、という辺りが指導目標と考えます。ですから、なるべく標準的な英語を聞
かせておきたい、とも思います。

 これが基盤となり、その上に高学年になって思考力が伸びたときに Action シリーズで
ねらったような英語の表現を整理して順序よく導入していくと、中学以降の学習が容易に
なると思います。

  このご質問は、低学年で、年齢からいうと9歳くらいまでに、どのように英語に触れさ
せておくと、小学校高学年での英語との触れ合いが豊かになるか、という大切なテーマを
考えるきっかけになりますね。
 
  小学校で英語が必修となった、年間35コマ、5年生と6年生で「英語ノート」を使っ
て授業が始まる、ということが話題の中心になると、今まで1年生からのカリキュラムを
組んでこられた学校で、低・中学年の英語活動はどうしようか、ということが問題になり
ます。高学年から英語を扱ったコミュニケーション能力を育てる授業をする、という考え
方に傾いていくのではないか、と思われる方もあるでしょう。
 
  実は、民間英語教室では、高学年から始めるカリキュラム作成・教材開発の経験は多々
あると思いますが、早くから英語を教科として取り入れてきた私立小学校では、1年生か
ら開始するのが殆どで、過去に高学年だけ導入していたところもあったようですが、あま
り良い結果を得ていなかったようです。
 
 私の個人的な経験、各地で行われていた公・私立小学校での実践の様子を見聞したこと
から判断しても、5年生から始めるときのご苦労、低学年から始めるときの気安さ、そし
て低学年から始めても高学年になるにつれて指導内容や指導方法にも難しさを感ずる、と
いうことは珍しい例ではないようです。
 
 今回、指導要領では必ずしも5・6年生から外国語活動を始める、とは言っていないに
もかかわらず、何となくそのような印象が強いのは、高学年にだけ教材が配布され、カリ
キュラム案と指導例が明示されてきたからだと思いますが、この際、低・中学年でどのよ
うなことをしておくのが得策か、ということも考えておく必要があるでしょう。
 
 低学年の子どもたちは、お話を聞いていると、だんだんに自分もその世界にどっぷり浸
かってしまって、赤頭巾ちゃんが狼さんに出会うと、自分の目の前に狼がいるような気分
になったり、お財布を落とした子どもが困っている絵を見ると、ここにあるのに、と教え
てあげたくなったりするようなかわいさがあります。絵の中の人物が着ている洋服の色を
話しているときにも、いい加減では済まされない、青は青でも少し緑色がかっていると、
単に「Blue」と言い切ることができない、親身になってそのこのことを考えてくれます。
 
 このような気持ちを大切にして、動物さんたちはどんな色をしていて、食べ物は何が好
きで、どんなところに住んでいて、何ができるのだろう、と本気で考えてくれます。その
空想の世界と現実の世界を自由に往復できる心の動きを掬いながら、英語で分かりやすく
表現していくと、こっくりしながら聞き続けてくれます。先生が表現してくださるのを聞
いているだけで充分なのです。心の中で大きく相槌を打っている、この経験が英語の世界
へ近づく第一歩だと考えています。
 
 歌もメロディに親しみ、リズムに乗って体を動かしている間に、なんだか歌えたような
気分になれる、そしていつの間にか繰り返しのところやおもしろい音のところを歌えるよ
うになってきます。授業を重ねているうちに、数ヶ月前にはただ体をゆらゆらさせていた
だけだったのに大分口元が動くようになっている、1年もたつ頃には、意味を正確に理解
していなくてもまるですべてを理解しているように歌うことができるようになっています。
これは、日本の大人のための歌を子どもが何食わぬ顔をして歌うのと同じです。
 
 毎日の生活の中では使わない音のつながりで意思を伝えるおもしろさ、ちょっぴり未知
の世界に踏み込んだ冒険心を満足させながら、英語に触れていく、というのがWonderland
での子どもの英語と触れ合う遊びの世界です。そこで覚えるともなく聞いて、「聞いてい
ると、分かったような気がしてくる」経験をたくさんしておくことが、高学年での、もう
少し習得への道筋が整えられた路線に乗っかることを容易にします。
 
 ですから、「今日は何が分かったでしょ。こういうことを練習したのですよ。この次は
こういうことを分からせてあげますからね。」という授業つくりはしません。先生はいつ
も子どもたちが元気に流れてくる英語の音を無意識に受け止めて、抵抗感なく反応してい
るかどうかだけに心配り、覚えたかどうかについては気にしないでいいのです。覚えてい
ないようであればまた次の機会に繰り返せばいいし、別のことのほうに注意が向いてしま
っても大丈夫なのです。似たような言語材料で英語と触れ合っていると、いつの日か突然、
思いがけない英語の発話が飛び出してきて、先生を驚かせてくれるでしょう。時間は掛か
りますが焦らずにじっくり待つことが大切です。
 
 そうしていると、高学年になって、英語の整理された言語素材を、論理的な思考が手伝
って理解を深め、きちんと記憶装置の中に組み込んでいってくれます。そのときに低学年
で育てておいた英語の音への対応能力を発揮してくれると思います。低学年から英語に触
れていた子どものクラスでは、授業で表現することへのためらいがなく、結果的に内容が
濃くなり質が違ってきますから、教えるスピードも違います。10歳以後になって初めて英
語に触れ「英語らしさ」を身に付けさせようとするときに教師が感ずる難しさを考えると、
やはり何らかの形ででも早期に英語に触れておくことの有利さを否定することはできませ
ん。

                      久埜 百合 (中部学院大学)

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