えいごリアン・コーナー

英語の単語をどんどん拾っていく子どもたち
  初めて見せた「えいごリアン」を、子どもたちは、身じろぎもせずに見ているのですが、
 随所でぶつぶつと独り言を言っている様子が見られました。例えば、マイケルの天使姿を見
 て、ある子が、「天使じゃん!」と言いました。すると、マイケルが、" I'm an angel." と言
 うのが聞こえてきました。その子は、「あぁ、エンジェル。」と納得顔でつぶやきました。
 続けて、"astronaut" と聞こえてきたのを聞き取って「アス…」と出だしだけ声に出して言
 っていました。宇宙飛行士って英語でそういうのかと思ったのでしょう。リピートしてみよ
 うとしたのですが、1度聞いただけだったので、全体は無理だったようです。それでも、本
 人は、「ふ〜ん」と納得した顔をしていました。その子は、マヨとケチャが "Nice to meet 
 you!" という場面でも、最後にユージとマイケルが "Friend! " と抱き合う場面でも、イント
 ネーションまでそっくり真似して、繰り返していました。クラスのあちこちで、この子のよ
 うに、聞き取れたことを、口を動かして呟くようにリピートしている子どもたちが見受けら
 れました。もしかしたら、この子たちは無意識にリピートしているのかも知れないと感じま
 した。聞こえたことを繰り返すというのは、もしかしたら、子どもが新しいことばと出会っ
 たときの化学反応のようなものかもしれないなぁなどと考えました。

  普段の授業で、明示的にリピート練習させるのと、こうして、自然現象のように子ども自
 身がリピートして納得していくのとでは、結果も違うのかなぁなどと思いましたが、いかが
 でしょうか。また、子どもが自然にリピートしてしまうような状況を、自分の授業の中では、
 どうしたら作れるのでしょうか。

A: 私自身が、「えいごリアン」を子どもに見せて授業をしていたときに経験した、子ども
  たちの様々な表情が浮かんできました。本当に一人一人の子どもが、それぞれに反応して
  いて、見とれてしまいますよね。

   子どもたちが、聞こえたことを自分で勝手に繰り返している様子、とても大事な言語習
  得の場面だとおもいます。赤ちゃんが母語に触れているときにも、いつもやっていること
  なのですが、意外と見落とされているかと思います。これは  private speech と呼ばれて
  いるのですよね。

   ちょっと思い返してください。「さぁ、もう一度言ってみましょう」と言うとしたら、
  そこにはモデルの英語の間に、日本語が割り込んでいますよね。モデルと、子どもが真似
  をしようとしている「心の中にある音」との間に、日本語を差し込んでしまっています。
  また、Let's repeatと英語で指示をする場合も、折角子どもの頭の中では映像のストーリ
  ーについて言っているのに、それを断ち切って練習することになりますから、練習する英
  語そのものは場面から切り離されて意味を失ってしまいます。それより、やっぱり子ども
  の心の動きを大事にして、真似をするのに任せておけばいい、と思います。

   もう一つ大事なことは、真似をしたくなるような話しかけだと思います。「えいごリア
  ン」では、多くの場合、真似をしたくなるような話しかけに成功していると思います。そ
  れは、ミニ・ユージが、話しかけられているときに繰り返して何かを言ってしまう姿から
  もよく分かります。私が経験したクラスでも、言えそうなところだけ真似をしている、と
  いう場面に何度もぶつかりました。そして、それは中学年以下のクラスの子どもたちの方
  が、無類に聞こえたとおりの音を創り出しているのです。The United States of America 
  と聞いた途端に、America とだけ言った子どもの発音は、まさにネイティブの音でした。

   いいモデルの教材があるときには、やたらとこちらが口を出さずに、子どもの学びの姿
  に任せる、というのが、何もしないけれど一挙両得、ということでしょうか。子どもの学
  ぶ力をもっと信頼すべきだな、と思う一瞬です。


                            ※質問者: 相田眞喜子   ※回答者 久埜百合

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