英語のリズムを体で捉えて、表現する子どもたち
『えいごリアン2000〜2001年』のどれかを選んで子どもに視聴させる15分間という短
い時間は、教師である私にとっても思いがけない「学び」のある時間である。それは、子ど
もがことばを学んでゆく様子を伺える絶好のチャンスとなるからである。あんなに騒々しか
った3年生の子どもたちが静まり返ってスクリーンにくぎ付けとなるのだから、不思議な魔
力を持った番組であることに違いはない。子どもたちは、まず、どんなきのこが現れるかと
興味しんしんである。スキットの場面は笑いながら楽しそうに見ている。話の筋を理解して
笑っている様子が伺える。
私が一番面白いと思うところは歌のコーナーである。"The Days of the Week"では、ほぼ
全員が中腰になってユージたちのジェスチャーを真似て一緒にやっていた。"Who took the
cookies from the cookie jar?" のチャンツでは、ユージたち3人の手振り身振りそっくりに
体を動かす子どもが何人もいた。"Where do you live?" の歌が始まったら1人の男子がやお
ら立ち上がって、腰を振って踊りだした。なんというリズム感! 1週間後の授業のときに、
CDでその歌だけを聞かせたら、今度は、1クラス全員が体を左右に動かして歌いだした。
歌そのものを教えたわけではない。あまりに調子のよいリズムだったので、口をついて英語
が出てきたのだと思う。
同じようなことが "One potato" の手遊びを見たときにも起こった。 ビデオ視聴後に教え
たわけでもないのに、授業が終わってから、"One potato, two potato" と何人かの子どもが
つぶやいていた。英語の心地よいリズムが気に入って耳に残り、 知らず知らずに体を動かし
たり、private speech のように言えるところを言っている。英語のリズムを体得するとは、
まさにあのようなことか、と実感した。 これは、子どものことばの学び方を示す好例である
と思う。
また、もう1点、感じたことがある。それは、良質の音源を与えることの大切さとリズム
を視覚的にも楽しく見せる制作者の側の技である。企画委員の久埜先生に伺ったところ、歌
だけでなく、スキットの中でも、どのような体の動きで意味を伝えるか、皆で話し合ったそ
うである。音声教材の制作者の責任は大きいと痛感する。子どもの学びが起きるか起きない
かが、教材の良し悪しで決まってしまう。
佐藤令子(暁星小学校)
子どもの中から学びが芽生えてくるところを目撃された報告です。ギャングエージといわ
れる3年生が屈託のない無邪気さで英語の音に体当たりしている様子がよく分かります。と
もすると、低学年にはやさしい単語を覚えさせて・・・と、フラッシュカードで身近な単語
を見せながら繰り返させる授業作りをしがちですが、このように英語独特のリズムを身体で
表現することが、英語らしさを体得することに繋がり、「素地」を養うことになるのだと考
えられます。
このような反応を高学年の子どもたちにも期待するためには、本当にすぐれた音声素材が
必要です。子どもたちが教材の内容に夢中になり、思わずリズムに乗ってしまって、いつの
間にか聞こえてくる英語を呟いている、そんなことが起こりやすい『えいごリアン』を試し
てくださる学校が増えてくることを期待しています。
久埜 百合(中部学院大学)
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