実践報告@
「えいごリアン」を使ってみて 佐藤 令子 (田園調布雙葉小学校)
平成23年(2011年)から高学年で週当たり35コマの「外国語活動」が公立小学校で 必修となる。配布される「英語ノート」をベースに授業を進めていく学校が多いと思われる。 しかし研修制度が充実しているとは思えない現状で、英語指導の経験が少ない学級担任の不安 は大きいことが想像される。その先生方にとって強力な助っ人になるのが、2000〜2001 年度制作NHK 学校放送番組「えいごリアン」である。(再放送を重ねたが、2007年度で 放送は終了。現在、VHS/DVD で市販されている。)この番組は、年齢に関係なく楽しめる、 実に不思議な魔力を持った番組である。勤務校では3年生に見せているが、1度見せたら次に 教室に入ると、必ず「今日もビデオ見る?」と聞かれるぐらい人気が高い。目を輝かせて最後 まで食い入るようにテレビ画面を見ている子どもたちの姿に驚きすら覚える。公立小学校での 飛び込み授業の折に見せる時も、全く同じ反応が得られる。 番組は、英語に挑戦するユージ、彼の手助けをする仲良しマイケルとジャニカの3人を中心 に進行する。二人のわかりやすい英語の話し方は、教師にとって teacher talk の良い見本と なる。2つのスキット、アニメのマヨケチャ、ユージが変身したミニ・ユージが外国人と片言 の英語を使って色々な異文化体験をするコーナー、他教科の内容も盛り込み、取材フィルムの 迫力ある画面が続く映像コーナー、歌などで構成されている。どの場面でも、1つの決まった 英語表現(番組タイトルの表現)がいろいろな状況で適切に繰り返し使われている。どの回で も15分の中に20回以上基本表現を聞くことができるので、英語の体験がない子どもでも大 体の意味を類推することができる。 子どもの学びが目に見えるかたちで起こることもある。ある時、How many legs does a spider have? というタイトルの映像を見せていた。この中にHow many takoyaki do you have? とマイケルが言う場面がある。自分が持っている箱の中にあるたこ焼きの数がひとつ 足りないので、不満そうにユージたちに聞く場面である。実は自分が持っている箱の蓋の裏側 に1つがくっついていたというオチがあるのだが、あまりにその場面にはまった表現だったの で、一人の子どもがそのことばを覚えてしまったのである。それも私の勤務校の生徒だけでは なかった。ある公立小学校の先生も同じ経験をした。たった15分という短い時間であっても 「えいごリアン」を通して「子どもの学び」がおこることを示す好例だと思う。 もう一例ご紹介したい。それは、2000年度の最後の番組でミニ・ユージがインターナシ ョナル・スクールの子どもたちと仲良く「だるまさんがころんだ」のゲームをしているシーン を見ていたときのことだった。どこからとなく自然発生的に、子どもたちの拍手が聞こえてき た。ミニ・ユージの堂々たる英語の使い手としての姿に子どもたちは自分の姿を重ねていたの かもしれない。こんなところに今言われる「コミュニケーション能力の素地」が育っていると 思う。 私たち教師は、子どもたちに出来るだけ自然で、わかりやすい、本物の英語を聞かせて、英 語という言語に特徴的なリズム・イントネーションを体に染み込ませたいと願い、授業では、 ことばがことばとして機能している状況を上手に仕掛けていきたいと腐心する。「えいごリア ン」は、その両方を提供してくれる教材である。「英語ノート」が意図しているところをさら に膨らまして、子どもたちが活発に英語を使うようになるサポートをしてくれると確信する。 廃止されてしまった「えいごリアン」のホームページには、番組に添った子ども用のゲームコ ーナーから先生のため授業案、基本表現を使ったアクティビティーの紹介、公立小学校で実践 した「えいごリアン」を使った授業の動画まで含まれており、まさに至れり尽くせりだった。 「えいごリアン」の番組とホームページが復活されることを願わずにいられない。 |