小学生に英語を手渡す仕事に就いて10年以上の月日がたちます。飽きっぽい私にしては
驚異的な持続力です。 何が楽しくてここまで来られたのでしょう?
それは二つ目の言語と取っ組み合いながら、なんとか自分の思いを伝える道具として使い
こなそうとする子どもたちの姿の中に、ゆるぎない力を見出したからに他なりません。
前日にあったマラソン大会についてやりとりしていると、必死に "Three! Three!" と
いう子がいるのです。 「?」と思っていると、 「○○くん、あし速いよね」と他の子が
いってくれました。 自分が3位になった誇らしさを何とか伝えたくて、自分の持っている
英語力を総動員した結果の"Three!" だったのです。
またある時は、4時間目の授業が終わる5分前に時計を指差しながら "Five. Five."
という子がいました。 今日に限って何だろうと思っていると、その日からリレーの選手の
練習が昼休みに始まるので、その子たちのために何としても終わりの時刻を守ってほしい
という"Five."だったのです。
二人とも、「ぼく3位だったんだよ」「あと5分できちんとやめてね」と日本語を使っても
充分用が足りるどころか、普通日本人同士ならそうするのが自然なところを、あえて英語と
いう手段で思いを伝えようとしているのです。ほんのひとことの数字にこめられた子どもの
思いをしっかり受け止めた上で、 "You were in the third place." "Don't worry. I know
we have only five minutes to go." と英語で対応することを続けていきたいと思います。
どうしても伝えたい、どうしても聞きたいという思いを表す手段として、人間は、身ぶり
手振りなどたくさんの方法を使いこなすことができます。 そのたくさんの方法に「英語」と
いうオプションをきちんと加える手助けをしている実感が、 この仕事の楽しみなのだな、 と
子どもたちの姿を見ていて改めて思うのです。
粕谷恭子 (聖マリア小学校) |