ぼ〜ぐなん広場 (41) English in Action に文字が多いのは何故? |
Q:久埜先生が書かれた「English in Action公立小学校用改訂版」というのを持っていますが、 文章が沢山書かれているので、驚いています。 子どもたちは、文字の読みはアルファベットと、簡単な単語を少々程度の高学年です。 どう扱ったらいいのでしょうか。 A:テキストの文字は、子どもたちのため、というより、授業をなさる先生方のために書きました。 子どもは、そこに文字があっても、先生の、或いはCDの声を聞きながら文字を読もう、という 気持ちにはなっていないと思います。 先生は、イラストを指さしながら、印刷してある英語を 参考にして、どんどん話しかけていただきたいと思います。 子どもたちが、CDを聞いて、真似をしてCDそっくりに言っているので、何回目かのレッスン のときに、うっかり○○ページを読んでみよう、と声をかけてしまったことがあります。 そう したら、「英語なんて書いてないよ!」という子どもがいて、びっくり。「書いてあるじゃないの」 と指で示すと、「あぁ、これなの!」という反応です。子どもは、絵を見て意味を納得して英語 を使っていたので、読んではいなかったのです。文字がある、とは思っていなかったのでした。 一本取られた!と思いました。 子どもに英語を経験させる第一段階では、あの文字を子どもに意識させることは不必要、という より、意識させない方がいいです。 ひたすら先生があの英文を参考にして話しかけ、子どもは それを聞いている、そして、聞いていると意味が分かってくる、という体験をさせたいのです。 子どもが外来語などで知っている単語を使えば、相当幅広く英語を使って表現活動が出来るはず です。英語を聞くことに慣れ、真似をして自分でも表現できるようになると、英語を使って自分 の思ったことを伝え合う経験をしている間に、先生が繰り返し語りかけることが文字化されてい る部分を発見して、先生の話す英語とともにページに印刷されている英文を目で追えるように なっていきます。そんな様子が見えるまでは、あの英文を読ませよう、とこちらから働きかける ことは禁物です。英語の音の流れが充分に入っていない段階で文章を読ませようとすると、一語 一語拾いながら読もうとするため、英語らしい音の流れが身につきにくいからです。 テキストの英文のレイアウトにはこだわりました。 登場人物の誰かが話していることばが文に なっているのですが、吹き出しになっているところは少ないです。そして、一つの文が終わった ら、次の文を続けて書かずに、改行して、頭を揃えて並べました。そこがポイントです。子ども に、英文が主語+動詞で始まる、とは口では言いませんが、なるべく早く気がついてくれるよう にと考えた仕掛けです。英文の主語と動詞が上下で揃えてあるところ※ が、英語を口にするとき の最初の音になる、ということをいずれ感じ取ってくれることを願いました。 ※例 I have eight legs. I have four legs. I have two legs. I have four legs. I have no legs. 文字なしで英語のQ&A活動をしていると、分かっているはずなのに、「最初になんて言うん だっけ?」と駆け寄ってくる子が必ず出てきます。小声で"I have" とか、"Do you have" とか囁くように言いますと、勢いよく英語で話してくれます。この「囁き」が微妙で、クラス 全体に聞こえるような「囁き」ですから、次の子どもも、安心して、その「最初の言葉」を使っ て英語で話します。暫くすると、又 駆け寄ってくる子がいて、「最初になんて言うんだっけ ?」と訊きます。同じように囁きます。安心して英語で話します。 そんな段階になったときに、CDを聞くときにはあの印刷された英文が役に立ち、「最初に なんと言うか」が分かります。こうして、「読む」という活動の入り口に立つことが出来るの です。こう申し上げると、アルファベットを教えておかなくては、と思われるかもしれませ ん。 でも、NHKを始めとして、世の中に溢れているアルファベット文字を読んでいます ので、子どもは素晴らしい勘を働かせて、見当をつけて英文を辿っています。 母語である 日本語で絵本の読み聞かせをしてもらっているときに、 何となく字面に目を走らせている のと同じです。 週当たり1回あるか無いかの授業でしたら、最低1年間、長ければ2年間くらいはこのよう な調子で 授業を進めてくださればいいと思います。英語も、apple/car/elephant/red/ bigなどのような単語だけでは用が足りない、文章で事が運ばれることを耳で経験させるこ とが入門期には大切です。 文章で話しかけるための先生のサポート、それがいつの間にか 子どもにとっても英語のルールの発見につながる、という仕掛けなのです。 こうして英文をたっぷり聞いていると、いつの間にか語順が体にしみこんでいきます。日本 語で英語の文法を説明してもらうのではなく、英語の音の流れを溜め込むことで、英語のル ールが身についていくのです。そうすると、table on などの日本語の語順が口をついて出て きてしまうこともなく、I like 〜.とか I have 〜.という文を I am like/ I am have など と書いたりすることもできない子どもが育ちます。 文字に頼らず、まず音でたっぷり英語と の触れ合いを楽しませて上げましょう。英語の音の枠組みを導入の段階でしっかり作ってお くことが、語順に対する感覚を伸ばす、ひいては、英語のルールを身につける、ということ について、また「広場」でおしゃべりをしたいと思います。 久埜 百合 (中部学院大学) ※English in Action 公立小学校用改訂版 http://www.borgnan-eigo.com/exp/action-koritsu.htm ※English in Action オリジナル http://www.borgnan-eigo.com/exp/action.htm |
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