ぼ〜ぐなん広場 (43) 小学校現場からの疑問 | |
暑かった夏を如何お過ごしでしたか。子どものための行事、先生方の研修、そして、秋学期の ための準備、とお忙しかったことと思います。私も7月8月はいろいろなところでたくさんの 先生方とお目にかかり、多くのことを学ばせていただき感謝しております。先生方からは数え 切れないご質問を寄せていただき、そのどれもが教育の根源から発せられるものでしたので、 考えを深めることが出来ました。その中から3つ取り上げてみます。 Q1: 英語活動が楽しい、という子どもは、いつも「今日のゲームは何?」と期待しています。 子どもは興奮して参加していますが、本当にこのゲームによる授業を「英語活動」と呼ん でいいのか考えさせられます。 ゲーム活動がなくても楽しいと思える活動を探していきたいのですが、アドバイスをお 願いします。 A1: いつの頃からか45分の授業の中にはゲームを一つか二つ仕組む、ということが小学校 英語の定番のように考えられています。でも、ご質問のように、ゲームをする目標が、 「楽しませる」こと以上には考えられていない、「英語に慣れ親しませる」ということで納 得しようとしているのを感じます。そんなときに、背丈が教師の肩を追い越しそうにな った子どもに、「もうゲームしなくてもいいから、英語をちゃんと教えて。 自分のイイ タイコトが言えるようにして欲しい。」と声を掛けられたことはないでしょうか。 ゲーム感覚で楽しい活動ではあるけれど、そこに「学び」が起こるような活動を見つけて いきたいと思います。競争で、勝った!負けた!ではなく、緊張はあるけれど、英語だ けで問題を解決していく活動、その活動の中で使うことができた英語を別の機会を見つ けて自力で使ってみるとうまくいく、もっと英語を聞きとろうとチャレンジしたくなる、 やりたいこと、考えていることを伝えてみたい、そして、知りたい情報を英語でも得ら れる、という成功体験を与えたいと思います。 例えば ・英語で、県庁所在地と県の名前を確かめあう遊び ・英字新聞の天気欄をみて、世界中のお天気を調べる ・友だちの好きな食べ物+スポーツ+歌の情報を集めて、友だちあてクイズ のような、知識欲を満足させる活動も充分に楽しめると思います。そして、気がつくと、 英語の表現の形が分かってくるような気がする、それを試してみる、うまく行く、そう いう積み重ねが起こるような、「ゲームみたいな活動」を授業に仕込みたいですね。 Q2: 「コミュニケーション」能力の育成ということですが、暗記して英語を言えるようにし たり、単語を書けるようにしたりすることの前に、まずは、「聞く」ことを大切にした いと思います。そのためには、自分が「話す」努力をしないといけないのだと思います がなかなか大変なことです。アドバイスをお願いします。 A2: 教師が英語で話しかけ、子どもたちに英語を聞き取る力をつけさせようとすることは、 今までの英語教育の指導でも経験が浅く、教師自身が不慣れです。英語で話しかけるこ とはどうしても抵抗があるとすれば、先生が話さなくても済む方法があります。それは 上手に視聴覚教材を使いこなすことです。先ずはビートルズの歌を聞かせる。え?そん なことでいいの?と思われるかもしれませんが、ビートルズ世代の両親を持つ子どもた ちは、不思議と「英語らしい発音」をすることに抵抗がなかった、という例からも、普段 英語に耳をそばだてていることは大きな効果があります。 もっと教材らしいものを、という方には、絵本の附属のCD、子どものための英語の歌 を集めたCD、或いは子どものために制作されたビデオ教材などを使って、子どもたち がどんな表情で聞き続け、見続けるかを観察して見ましょう。子どもたちは初めて聞く 英語にも映像や絵本の挿絵の助けを借りて目を輝かせています。そして、分かった!と 思っています。 ご自分でも英語を使って教室英語くらいは何とかしたい、と思われている先生には、入 手しやすい教材として、中学の英語検定教科書をお薦めしています。3年間の内容のう ち、小学校英語で必要とするものは2年生の2学期くらいまでで充分だろうと思います。 それを音読するのです。英文を気持ちを込めて音読してみます。中学生だった頃にはも っと棒読みだったな、などの反省も込めて、聞き手に気持ちが伝わるように抑揚をはっ きりつけて読みます。小学校の先生が国語の時間に読み聞かせをなさるときの調子でな されば、直ぐに自然な英語のやり取りが出来ると思います。 それでも、初めから45分をすべて英語で、と力むと疲れますから、先ずは、Stand up. Sit down. くらいからはじめます。座っている子どもたちに大きな声で Sit down!と いうと、びっくりして立ったりする子がいて、大笑いをしながら緊張がほぐれていきま す。だんだん言えるものを増やしていくと、いつの間にか授業は英語で転がるように進 んでいきます。 Q3: 小中連携がよく話題になりますが、小学校の英語活動と中学校で学習する英語科とが、 うまくつながっていくのだろうかと疑問を感じています。 A3: 小学校で経験する英語は中学で役に立つのだろうか、ということは、子どもたちも心配 しているようです。英語活動で使う英語が、今ひとつきちんと理解できずに、覚えて口 にしている子どもたちは、英語の仕組みが分からない不安を感じて、中学ではきちんと やり直すから大丈夫だろう、という淡い期待も抱いているようです。先生の勤務される 小学校の卒業生が進学する中学校で、他の小学校から集まった子どもたちと一緒に楽し く学力差を感じないで学習できるか、そして、受け入れてくださる中学校の先生が、小 学校で身につけてきた英語を中学で学ぶ英語と齟齬を来たすことなく継承していけるの か、そこが問題です。 既に小・中間の相互情報交換や、小学校の英語担当教師と中学校の英語教師とが相互に 出張授業をする実験が始まっている地域もあります。その過程で、いろいろな問題が存 在することも明らかになって来るでしょう。皆で虚心坦懐に話し合い、子どもたちが小 学校で英語に触れ始めたことを「よかったな」と思いだせるようにしたいものです。難し いこともあるでしょうが、現場の教師が解決しなければならない、誰にも任せることの 出来ないことなので、じっくり、正直に、誤魔化すことなく現在行われている授業のあ り方を見つめ、解決していきたいと思います。 これからも、広場で、皆様の直面しておられる問題を話し合っていきたいとおもいます。 お便りをお待ちしております。 久埜 百合 (中部学院大学) |
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