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    英語を呼吸する子ども達
 3年生の子ども達に、『おはなしえいごリアン』の「三匹の子ブタ」を見せていたとき
のことです。ビデオに引き込まれ、しーんと静まりかえった教室を見回していると、ふと、
一人の子どもが、小さく体を動かしているのを発見しました。どうしたのかしら?と不思
議に思ってじっと見ていると、なんと、狼役のジャニカの熱のこもったセリフを聞きなが
ら、そのセリフにあわせて体を揺すっているのです。まるで自分がそのセリフを言ってい
るかのように、息を吸ったり、止めたり、吐いたり!そう思って見回してみると、その子
だけでなく、何人もの子どもが同じようにしていました。本当にビックリしました。

 そういえば、5年生の音読の指導をしているときも、なかなか言えない文を私が言って
聞かせるとき、子どもが自然に体でリズムを取ることがあります。その後、復唱するとき、
その子は、上手くリズムの中にことばをはめようと、体でリズムを取りながら、何度も言
い直します。

 えいごリアンを見ていた3年生も、音読の練習をしていた5年生も、もしかしたら、体
の動きや、自分の呼吸を使って、英語の音の流れをとらえようとしていたのかも知れない
と思いました。このように、子どもがことばを獲得していくプロセスの一端が見えた!と
思う瞬間は、本当にわくわくします。

 実は、日頃から、3年生の子ども達が、英語で質問しても、どうもなかなか文で答えて
くれないなぁと思っていたのです。"Where do you live?" と聞くと、"Meguro." などと
単語だけで答えてしまって、なかなか  "I live in 〜."  と言ってくれず、少々うずうずして
いました。でも、ビデオを見ている子ども達の姿を見て、この子達はまだ文で言う準備が
できていないのだと気づきました。本人達は無意識なのだと思います。ジャニカが息を吸
うときに思わず一緒に息を吸い、ジャニカがことばを発するときに思わず一緒に息を吐く。
こんなことを繰り返しながら、リズムやイントネーションなど、英語の音の流れを体感し
ている最中なのでしょう。もし、この子ども達に、英語を聞いてリズムやイントネーショ
ンを経験するチャンスを十分に与えずに、いきなり文を言わせようとしたら、ことばが流
れ出ず、たどたどしくなって、呼吸が乱れてしまいますので、その結果、リズムやイント
ネーションが崩れてしまったり、言わされること自体に抵抗を感じたりするのではないか
と思いました。

 黙ってビデオを見ているだけのように見えた子ども達が、本当は、全身で英語を呼吸し
ようとしていたことを思うと、子どもに聞かせる英語は、リズム正しく発音されていなく
てはならないと、改めて身の引き締まる思いがしました。歌やライムや英語の文章表現の
音源としてCDやビデオ教材を選ぶとき、特に気をつけなくてはなりません。昔、金田一
春彦先生が、講義でユーミンの曲の歌詞について、日本語のアクセントのあるべき位置と
メロディーがずれているから新鮮に聞こえる、とお話しされていたのを思い出します。こ
のことからも分かるように、油断はできません。無理に一定のリズムにはめようとして、
英語本来のリズムが崩れてしまっていないか、ことばのリズムとメロディーのリズムがず
れてしまっていないか、注意深く選び、子ども達には是非良いものを沢山聞かせ、体感さ
せてあげたいとの思いを新たにしました。

                       相田眞喜子(田園調布雙葉小学校)


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