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    中学校英語の質はどう変る?
Q:中学校の教員です。
  公立小学校から英語を始めることによって、
  中学校英語の質がどのように変っていくことが期待されるでしょうか。:小学校教育課程に、どんな形であろうとも子どもたちが英語と出会える授業を導入
  しよう、と公の場で提唱されたのは、私立小学校で長年英語教育を担当されてきた
   野上三枝子先生でした。日本人が外国の人々と言葉で意思を伝え、情報を交換し、
    話し合いによって問題を解決する力を高めたい、という考え方は賛同者を得て20
   年以上の年月を重ねて現在に至っています。日本で生活をする多くの人々の中で、
    限られた人たちだけが私立小学校や民間の英語教室で英語に触れる機会を持てる、
    という教育環境を改めたい。すべての子どもたちが英語を学ぶ機会を得て、異質の
    言語に対してたじろぐことなく立ち向かい、いろいろな国々の、多種多様な言語を
    操る人々と意見を交わし、理解を深められるようになるために、公立小学校でも英
    語教育を開始すべきである、という主張でした。

  今、「英語ノート」が全小学校の高学年に配布されるように準備されています。既
  に何らかの方法で小学生のときから英語に触れてきた20歳前後の若者が増えてい
    ます。
  このような事態になって、実際に日本人の英語力は上がっているのでしょうか。英 
  語で意思を伝える力は伸びてきているのでしょうか。

  小学校段階の教育現場で、教育行政に関係する人々や子どもたちを預かる教師たち
    が、大変な時間と努力を傾けて、指導内容を模索し、教材を開発し、指導技術を向
    上させようとしています。子どもたちが進学する中学校の先生方とも連携をとろう
    とし、協力して研修を始めています。小・中学校の先生方がお互いの授業を参観し
    合い協議を重ねるだけでなく、実際に中学の英語科の先生が小学校で英語の授業を
    したり、小学校の先生が中学で授業をしたり、地域によって大きな差がありますが、
    着実に実験的な試みが行われ始めています。確かに、現場は変ろうとしていること
    が伝わってきます。

  このような現場の努力を目の前にして、この方向を更に強力に進めるとしたら、中  
  学校での英語教育はどのように変わることが期待できるでしょうか。
      @中学3年間の指導内容の質が高まり、英語の基本の習得をほぼ終了する
   A中学生の英語運用能力が向上すれば、自ら英語で情報収集・発信ができる
   B高校での英語学習が個々の学習者の必要に応じて特化したものになる
  現状から考えて、それは望みが高すぎる、と思われるかもしれませんが、このくら
    いの希望を持って、英語教育の現状を改善していくために努力したいと思います。

  指導技術向上のために、現場の実践についてどのような授業改善が求められるでし
    ょうか。
     @英語を聞いたり、読んだりする量を増やす
       A授業で使われる英語を、もっと意味のある、真実味のあるものにする
       B発信するよりも、先ず間違いの少ない英語をたくさん受信させる
    英語を聞く量を増やすこと、そして、その内容を真実味のあるものにすることは、
  小学校の指導でも求められていると考えています。 
    ともすると、発話させようとして聞かせる指導が多く、学習者にとっては自然な英
  語の音が崩れ、意味のない英語が多くなったり、楽しい授業を求めるために、学習
  者の精神発達段階から考えると幼稚すぎるゲームをさせたりすることがあります。
  他の教科を学習するときに鍛えられる論理的な思考能力は、英語にも通じるはずで
  す。英語を使って、その結果情報が増える実感を伴う表現活動を授業の中に仕込ん
  でいきたいと思います。
   
  学習中に英語で話したり、書いたりするときには、機械的な入れ替え作文のような
      形でないとどうしても間違いが起こります。この間違いを少なくするためには、標
      準的な英語をたくさん聞き、ほんものの資料にたくさん触れることが必要です。卑
  近な例では、英字新聞の天気予報欄、子どもたちが関心を寄せるスポーツ記事など
  が最初の手がかりとなるでしょう。

  現在使われている教科書は文章量が少ないうえ、読み聞かせたり音読したりする量  
  はさらに少ないと思います。小学校での英語指導が正しく行われるようになると、
    英語の音声に慣れた子どもたちが中学に進学してきます。受信・発信の学習に自信
    を持って取り組む力がついていると思われますので、中学での指導は今までより量
    を多くし、内容も深められるようになることを願っています。


                       久埜 百合(中部学院大学)

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